デート

初めてデートした時のこと
貴方は覚えていますか

楽譜屋で探し物をした後
喫茶店で食事しましたね

貴方はとても無口で
ピラフのお皿を
穴が開きそうな勢いで見つめながら
食べていた

音楽の話を少ししたでしょうか

いつも
言葉をひとつひとつ確かめながら
話していましたね

じっと相手の目を見る癖があって
見つめられると
何だか落ち着かないほどに
貴方の瞳は澄んでいました

お店を出てしばらく歩いてから
突然「かばん 忘れた」と
慌てて取りに戻ったのが忘れられない

なんて可愛いひと
そう思いました

今も
貴方は少しも変わらない
少年のように澄んだ瞳も
あの頃のまま

歳をとり
少し饒舌で気のいいおじさんになったけれど

これからも
ずっと貴方と歩いていたい
だから
明日は元気になります

ごめんなさい

生まれてから何十回目かの五月病に罹り
また朝から愛しい貴方を困らせてしまった

ごめんなさい

ありがとう

たった今
何もせず
どこにも出かけず
貴方の手から伝わる温もりに
ただ身を寄せてじっとしていたい
そうすれば
憂鬱はあとじさり遠ざかり
後には五月の瑞々しい緑だけが揺れるだろう

明日は
元気になります